モンスーンとガパオ
およそガパオほど簡単でクッソ旨いご飯物は無いんじゃないか。
少なくとも私は知らない。
味と香りがはっきりしているから、調味料の多寡や、具と米のバランスの不一致など、大抵の事は許容してくれる、包容力のある料理とも言える。
私が初めてガパオを頬張ったのは、今から20年ほど前、モンスーンカフェ代官山店の二階席だった。
オリエンタルな内装と圧倒的なホスピタリティー、二本のスプーンで小気味良くチャキチャキとご飯を混ぜる音、ナンプラーの香り。当時は全てが刺激的で、北国の片田舎から旅行に来ていた少年の心を夢中にさせた。
勘の良いアラサー紳士淑女はお気付きだろうが、時はキムタク主演の名作ドラマ「ロングバケーション」の最盛期。そのロケ地であったモンスーンカフェも一躍超人気店となっていた。
既に家庭料理の領域では頭角を現し始めていたムネオだが、エスニック料理の摩訶不思議な味や芳香には一体何が入っているやら想像がつかず、ねるねるねるねの延長線上にある魔法の食べ物にすら感じだ。
それから8年も後のことだ。ガパオにはバジルとシーズニングソースが入っているのを知ったのは。
群馬県で学生時代を過ごしたムネオは、何故か群馬に乱立するエスニック雑貨・食料品店の中で、ナンプラーやスイートチリソース、やたらでかいオイスターソース、シーズニングソース、パクチーなどなど、様々なアジアの食材を買い漁り、バイト先の賄い料理で試してはなるほどこういう味になるのか、と試行錯誤をしたものであった。
そして今、ガパオの摩訶不思議さのカラクリもわかって、朝ガパオをキメちゃうくらいにガパオとマブになれた32歳の私が、12歳のムネオ少年に捧げるガパオのレシピを紹介したいと思う。
《材料》※2人分
・牛挽肉(鶏ももでも豚挽きでも代用可)・・・100g
・にんにく・・・1かけ
・鷹の爪輪切り・・・ひとつまみ
・オイスターソース・・・大さじ1と2分の1
・シーズニングソース・・・大さじ1
・バジル・・・10〜15枚
・サラダオイル・・・適量
・好きなご飯(うるちまい、玄米、タイ米、雑穀米、押し麦)・・・適量
・卵・・・2個
・玉ねぎ・・・半玉
《作り方》
①さて、ガパオを作ります。温めたフライパンに牛挽肉を入れ、6割がた火を通します。そこにみじん切りにしたにんにくと鷹の爪、細切りにした玉ねぎを入れる。
玉ねぎがしんなりしたら刻んだバジルを入れる。更に炒める。
②バジルがなじんだら、調味料を入れる。
③目玉焼きを作る
④ご飯の上に②の具と③の目玉焼きを乗せて、最後にちゃきちゃき混ぜながらいただきます。気分は瀬名で。